あとがき

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一九八八年、小林哲夫さん(全日本断酒連盟高知県断酒新生会会長、作家)から共著を出さないかとのお誘いがあり、二人で「水仲間」(土佐出版社)を出版しました。
後日、これに目を通された東峰書房の高橋衛さんからアルコール依存症に関する一般向けの啓発書を書くよう依頼され、お約束をしたものの私の怠慢で長年果たせないままに過ぎてきました。
昨年十一月末に常勤を退き、外来診療のみ続けることになりましたので、ようやく執筆にとりかかることができるようになりました。
医療スタッフ向けの教科書としては、すでに創造出版から「アルコール依存症――関連疾患の臨床と治療」(第一版一九八六年、第二版一九九六年)を出していましたので、今度は平易な肩の凝らないエッセイ風のものを書いてみたいと考えました。

したがって、一般の人たち、いまアルコール問題で悩んでいる人や家族の方々、さらに自助、グループの人びと、医療スタッフの人びとなど――すべての人たちに読んでいただけるような、大変欲張ったものを書こうと意図しました。四十五年にわたって、一人の精神科医がどんなことを考えながら仕事をしてきたか、生きてきたかを汲みとっていただければ幸いだと思っております。
本文の中でも述べましたが、われわれ人類は二十世紀は科学技術文明において飛躍的な進歩、発展を遂げ、十二分にその思恵に浴してきました。しかし精神疾患の変貌というレンズを通してみれば、われわれは科学技術と引き換えに、人類が文化や心の領域で失ってきたものがあまりにも大きかったことに気づかざるを得ません。
そういう意味では、二十一世紀はメンタルヘルスの時代であり、人類は失われた心、精神、スピルチュアリティの復権をめざさねばならないのではないかと強く感じます。

最後に、この本を書くにあたって、最初のきっかけをつくっていただいた小林哲夫さん、長年いっしょにアルコール医療にかかわってきた先輩、同僚のみなさん、多くを学ばせていただいた自助グループのみなさんに深く感謝いたします。
また、上梓に漕ぎつけるまで長いあいだ根気強く励ましていただいた高橋衛さんに心からお礼申し上げます。

平成十七年六月
今道 裕之

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